知らない人から突然、強い口調で「オクサン!」「まっすぐ!」「まっすぐ!」と指さされました。
ずっと通っている歯科診療所の待合室でのできごとです。
歯の治療が済んで待合室に戻り、空いている椅子に座って財布を出していた時で、声をかけて来たのは、治療の順番を待っておられた様子の5,60代の男性でした。
一瞬何を言われているのか?わかりませんでしたが、すごく怒っておられるようだということはわかりましたので、なんとかしなければと焦りました。
なぜそんなに怒っておられるのかわからず、頭の中は「エッ?」「ナニ?」とパニック状態。
椅子にまっすぐ座れと言われているのかしら?なぜかしら?変な座り方をしているのかしら?と、姿勢を変えたり周りを見回したり、・・・・・。
数回「エッ?」「エッ?」と聞き返して、ようやく「マスク!!」と言われているのだと分かりました。
確かに、歯の治療を終えたばかりで、マスクをしていませんでしたので、慌ててマスクをはめました。
こうして経緯を振り返ってみると、ほんの数分の出来事(たぶん)でしたし、診療所内でしたから、スタッフに助けを求めれば、とりなしてもらえたでしょう。
それでも、その時は混乱しましたし、トンチンカンな勘違いを笑うどころではありませんでした。
今思い出してみると、その男性は、日頃から他人に対して怒鳴りつけるような感じではなく、「みんなマスクをすべきだ!」という世間の空気を背景にした「マスク!」「マスク!」だったような気がします。
ああそうだ!これが「自粛警察」というものなのだと、しばらくしてから気づきました。
緊急事態宣言後「自粛警察」と言う言葉を耳にしてはいましたが、我が身に降りかかろうとは思ってもみませんでした。
しかし、どう考えても、「マスク!」「マスク!」と怒鳴りつけるような場面ではなかったと思うのです。
人ごみの中でもないし、しゃべっていたわけでもありませんし、歯の治療をしてきたばかりだとわかっていることですから、しばらく様子を見て、それでも気づかないようなら、そっとマスクを指さして教えるぐらいの度量と距離感が、ふつうの大人の対応ではないかと、私は思うのです。
それに、コロナ前の日常だったら、この男性も、赤の他人を怒鳴りつけることなどなかったろうと思います。
日本中、世界中がコロナ感染の恐怖でパニック状態が続いています。
どうやら終息するのには長い時間と忍耐が必要なようですが、その時間と忍耐が私たちに残っているでしょうか。
実際に怒鳴られてみると、とても不安です。
人と人が、お互いのうっかりや弱さを、お互いさまと受け止めあうことのできる社会になって欲しいと、心底願います。