仕事は、長時間、毎日続けるものですから、身体に大きな影響が出るのは当然です。
昔の男の人の手のひらは、大きくて分厚く、指の関節はゴツゴツしていましたし、背中を丸めて細かな仕事をしているのがおばあちゃんでした。
かつて、ほとんどの仕事は力仕事でしたから、毎日毎日1日中続けている男の人の手は太くなったでしょうし、野良作業や炊事、育児でも、しゃがんだり座ってする細かな仕事を担った女の人が長い年月を経て、背中や腰の曲がったおばあちゃんになるのも当然でした。
情報化の現代は、男性でも手のひらは薄くて、ほっそりした指ですし、腰の曲がったおばあちゃんをあまり見なくなりました。
仕事の違いが歴然です。
さて、福岡ジョブサポートで、理学療法士に来ていただくようになって10年を過ぎました。
各事業所で毎月1回、身体や認知などの特性を確認して、効率的な作業方法や職業選択、環境整備、支援の方法などのアドバイスをいただいています。
毎回2,3名の利用者さんが、担当支援者と共に、簡単な検査やインタビューを受け、実際に作業の様子も見られて、その方の特性を生かすことや、より効率の良い方法を検討しています。
今月郷口事業所では、片足のかかとが、いつも靴の内側を踏んでいて、足も身体全体も傾いて歩いている方に対して、靴底に敷物を敷いてみるようにアドバイスをもらい、実行した結果、まっすぐ歩けるようになったことを確認しました。若い方でしたので、足にダメージが残ることもなく、すんなりと変わることができたことは幸いでした。
「正しい歩き方を教えられないまま今に至っているのでしょう。知的障がいや発達障害のある方に多いです」と言われていました。
また、郷口事業所は就労継続支援B型事業所なので、比較的利用期間の長い方が多く、1年2年のスパンで変化を見ていただくことができます。
慣れた環境で、同じ作業を繰り返すことで、精度やスピードなど作業性は確実にアップしていきますが、そのためには、作業手順や資材の配置など効率の良い作業についての原則を守ることが必須ですし、耐久力集中力も必要です。
耐久力も集中力も、「気持ち」だけでは維持できません。
身体を整える、特に姿勢が大事で「姿勢が崩れていると後々腰痛などに繋がります」といつも言われます。
同じ仕事を繰り返すことで、効率の良い作業の仕方が身に付くと、当然作業量が増え工賃も増えますから、自信も生まれますし、苦手なところに気づいて受け入れることもできるようになります。
1つの作業で生まれた小さな自信が、次の仕事への意欲にも繋がります。
もちろん、まっすぐ進む方ばかりではありませんが、長いスパンで見守ると、着実に変化し気持は前向きになられ、筋肉も鍛えられて姿勢も良くなります。
仕事と身体の相互作用を、理学療法士が具体的にフィードバックしてくださることで、ご本人の意欲をかきたて、私たち支援者の仕事を振り返ることができているのです。