奈良県の市立大正中学校3年生の卒業まで半年間のドキュメントを見ました。
語りは、読み書きが苦手というゆうじ。穏やかで、とつとつとした語り口は、この中学校の空気をそのまま伝えてくれます。
僕の名前は、ゆうじ。
今年3月に僕が卒業した中学校には、いろんな子がいた。重い知的障害のある子、パニックになりやすい子、家庭のことで悩む子。僕も読み書きが苦手。でも、自分らしく生きていくことを校長先生や担任の先生たち、そして地域の人たちが応援してくれた。文化祭や体育祭、1日かけて自分たちの気持ちを語りあった「集中ホームルーム」。そして、進学受験。僕が過ごした中学校の半年を見てください。
障害のある子、家庭環境に悩む子、やんちゃな子・・・地域の子どもなら誰でも受け入れ、地域と連携して子どもの「しんどさ」に向き合ってきた、奈良県にある中学校の物語。
校長先生を始め、学校全体で、地域全体で、1人1人の生徒を育てているという様子が、とても心地よく伝わってきました。
上に書いてあるように、1人1人違う困難やしんどさを抱えている生徒たちが、一方通行ではなく、互いに支え合っているのです。
読み書きの苦手なゆうじは、隣の席の女生徒に助けてもらって教科書を読んでいるし、その女生徒は、母親が精神障がいのために体調の浮き沈みがあるので、家事の多くを担っていて勉強時間が取れず、進学先について悩んでいます。本人のみならず母親もまた、ままならない辛さに苦しんでいる様子がひたひたと伝わってきます。
どの生徒も、誰かに助けてもらいながら、自分も、自分ができることで誰かを助け、互いに補い合い支えあっているのです。
そうした体験を重ねることで、「誰にでも弱みはあるし、困ったら助けてもらえばよい」「誰かが困っていたら、自分のできることで助けよう」という、自分にも他者にも信頼感を持てるようになるのだということを、日々いろんなことが起る学校での生徒たちや先生方のやり取りや表情、行動を目の当たりにすることで、改めて学ぶことができました。
圧巻は、1日を費やした「集中ホームルーム」でした。
1人1人が、自分の気持を自由に語り、クラスのみんなで耳を傾け、聴いて感じたことをフィードバックするのです。
自分を語ること、聴いてもらえること、フィードバックしてもらえること、他者の話に精一杯耳を傾けること、語るその人の気持を感じ理解しようとすること、いろんな境遇や困難、いろんな思いやいろんな立場があるのを知ること、・・など、クラスのみんなが得るものは図り知れません。
こんな豊かなコミュニケーションと優しい時間を共有して卒業していく生徒たちを、心底羨ましく、尊敬の念が沸き上がりました。
きっと、長い時間をかけて試行錯誤してこられた到達点が、1日もかける「集中ホームルーム」なのでしょうが、この素晴らしい時間を持つために、どれほどの時間をかけて、生徒たち同士の関係と、そんな柔らかい雰囲気を育てて来られたのだろうと思いました。
この中学校が、特別なニーズを抱えた生徒を、わざわざ集めた学校ではなく、地域には「一人ずつ違う生徒」がいるのです。
どの地域にも、「一人一人個性を持つ、さまざまなニーズのある生徒(人)」がいるのが当たり前なのだという現実と、ワクワクするような希望を確信することができ、校長先生を始め先生方や54名の生徒とご家族、地域の方々に感謝の気持でいっぱいになりました。
二拍手!!