このコラムにも、障がいのある子どもを育てているご家族、特にお母様のご苦労と、周りの理解と支えの大事さを何度か書いてきました。

相模原津久井やまゆり園殺傷事件の後、ネットでは、犯人の「意思疎通の取れない障害者は社会にとって迷惑だ。社会の役に立たない障害者はいらない」等の言葉に共感の声がたくさんあったと聞きます。

障がいのある人への厳しいまなざしは、どこからくるのでしょう。

他人事と思うからでしょうか?自分には関係ないと思うからでしょうか?

 

かつてはそう捉えて「そうではなく自分事として考えよう」「障がいは、誰にでも起こり得ること」だから、そうした不利益を被っている人への支援の仕事に意義を感じてきましたが、最近はどうも違ってきている感じがしています。

自己責任が内面化される傾向が強くなってきて、他者に向けて厳しい目を持つだけでなく、自分自身へも「ダメな自分」「取るに足らない存在」という厳しい目を向ける風潮を感じます。それが反転して、他者への攻撃的な厳しい目になっているのではないかと思われ、これからの社会は、どうなっていくのだろうと恐ろしく感じます。

 

話が逸れました。

障がいのある子どもを育てる大変さ、しんどさについてでした。

子育ては「子どもという宇宙人」を人間に育てていく、正解のわからない、試行錯誤を繰り返す大変な事業ですが、特に障がいがある子どもを育てる親にとって、周りにお手本になる親子も少ない上に、ことあるごとに厳しい視線を浴びることも多く、傷つくことも多いのだろうと想像します。

利用面談などでお会いするご家族を見ても、大変な思いをして育ててこられ、常に緊張しておられるのだろうと思われるご家族ばかりです。

そんなご家族が出会って、話し合い聴き合うことのできる場があったら、きっと心が楽になられるのではないかと話し合っておりました。

 

一方、私たち支援者は、当事者やご家族と同じ経験ができるわけではありませんから、ご本人やご家族の思いに常にアンテナを立てておかねばなりませんし、学び続けなければなりません。

ご家族同士の語り合いの場は、スタッフの学ぶチャンスとしても、とても有効な場になると思われました。

 

幸運なことに臨床心理士の中島先生と出会い、3月に初めての「ご家族とスタッフの勉強会」を“はたらく大人にフィット”で実施し、7月には“ジョブサポート箱崎”のご家族にも声をおかけして、2つの事業所合同で開催することができ、発達障がいや知的障がいのある利用者さんのご家族が15名参加されました。

 

まず、中島先生から「発達障がいを持つ子どもを育てる家族のメンタルヘルス」と題して、お話をしていただきました。

臨床心理士として、スクールカウンセラーとして、障がいのある子どもや親御さんへのたくさんの支援をしてこられた経験から編み出されたアドバイスがたくさんありました。

 

その後、5つのグループに分かれて、お互いの体験や思いを話したり聴いたりする、やわらかな時間が流れました。

つらい体験のお話も、同じような体験をされたご家族同士で「わかる!わかる!」と、笑いが起こり、笑顔が生まれます。

終了後「一緒に帰りましょう」と、揃って帰られた方々もおられました。

初めて参加された方も多く、後日のアンケートでは、ほとんどの方が「次も参加したい」と書いてくださいました。

また、計画したいと思っています。