「今どこにいますか」

 今どこにいますか
 寒くはないですか
 お腹はすいてませんか
 眠る場所はありますか
 誰かと手をつないでいますか
 暖かな火はありますか
 誰かを胸に抱いていますか
 青い空をみあげてますか

 加藤登紀子さんの「今どこにいますか」という曲の最初の歌詞です。
 1ヵ月ほど前に、偶然この曲に出会い、それ以来通勤の行き帰りに何度も聞いています。
 ずいぶん前に購入したCDだし、今までにも聞いたはずなのですが、全く記憶にないし、初めて聞いた気分です。
 18曲ある中で、この曲だけを繰り返し聞いています。
 言葉の一つ一つが加藤さんの声音とマッチして、胸に沁みます。
 加藤登紀子さんの歌唱力がすばらしいのです。

 今の自分の気持にピタッと重なったから聞きたいのだろうけれど、なぜだろう?と思って、解説を読んでみたら、東北大震災の直後に作った曲だと書いてありました。
 地震や津波、原発爆発などで被災された方々への深い思いが凝縮された歌詞とメロディーは、誰かを気遣う心根に共鳴するのでしょう。 
 
 コロナ禍緊急事態宣言発出後の4月10日以来、在宅で過ごしておられる利用者さんへ、毎日スタッフが手分けして電話をしていました。
 「体調はいかがですか?」「体温は何度でしたか?」「喉とか痛くないですか?」「昨夜は眠れましたか?」「今何をしていますか?」「朝ご飯は食べましたか?」「今日は外出する予定がありますか?」「運動していますか?」・・・等々。
 毎日定番のシンプルな会話から始まるのですが、毎日会話していると、その方の変化が感じ取れるし、いろんな話題に広がる時もあります。

 これから働き盛りを迎えよう、就職をめざそうとしている若い方々にとって、この2ヵ月の伸びは代えがたいもので、この空白を取り戻すにはどれほどの時間が必要でしょう。
 また、お一人暮らしの年配の方にとって、刺激の少ない在宅生活の影響は大きく、筋力の低下や体調不調、何より意欲の低下が気になります。
 少しずつ利用時間を増やし、3月までの日常に近づいてきていますが、これからも、どんなことが待ち受けているかわかりません。

 ・・・・
 今日一日を生きましたね
 あしたのために眠りましょう

 出来るだけのことをして
 それでも足りなくて悔しさに泣けてくる
 どうしようもない ことばかり
 地団太を 踏みながら

 ・・・・
 あしたはくる かならず来る
 太陽はまわってる
 出来ることをひとつずつ
 またひとつ 積み上げて

 押しつぶされそうな心配や気遣いと、不安、悲しみ、絶望、怒り、辛さ、あきらめ、耐え抜こうとする意志、幽かな希望・・・がしみじみと、ズンズンと、胸の奥に突き刺さってきます。