「ふべんえき」と入力すると「不便駅」が出てきて、「不便益」という熟語は出てきません。
NHKの「デザイントークス+」の番組で、初めて知りました。
京都大学の川上浩司教授の造語で、便利さとは「手間がかからず、頭を使わなくてよい事」と定義すると、その対極の「不便」さの中に益があるということで、名付けたとのことでした。
便利さを追求していくことが進歩だと誰もが考え、より少ない負担で、より多い成果を得られることが良いこととしてきたけれど、「待てよ!?」そんなに便利になって、頭も体もドンドン使わなくなっていくことが良いことか?と疑問を持ち、不便さを選ぶことで、得られるものがあるのではないか?と、研究を進めて来られたとのこと。
- 富士山に登るのはきついからエレベーターをつけたら、うれしいか?
- ノー、そもそも山登りの楽しさは味わえない。
- 言葉を調べるのに、スマホを使えば、辞書は要らないか?
- スマホで調べるのは速いが、その言葉だけしかわからない。
辞書はページをめくりながら探すから手間がかかるが、例えば関連する言葉が目に入ったりなど思いがけないことが起る。
- スマホで調べるのは速いが、その言葉だけしかわからない。
不便から得られる益として
- 主体性が持てる
- 工夫できる
- 発見できる
- 対象が理解できる
- 私だけ感がある
- 安心できる・信頼できる
- 能力低下を防ぐ
- 上達できる
と、8つに分類されています。
確かに、こんなことは日常的にたくさんあります。
例えば、全自動洗濯機は、洗い方すすぎ方絞り方がパターン化されているので、ボタンをポンと押すだけでいいのだけれど、「すすぎをもう1回増やしたい」とか「皴になりやすい服だから絞りを1分だけ」とか考えて判断できる方が、私は好きです。
スーパーの野菜は、きれいに洗われているので、使う時には楽だけれど、採り立ての野菜が並ぶ産直の店の野菜は、泥など余計なものが付いています。泥がついた里芋はタワシでゴシゴシ洗わなければならないし、黄色くなった葉っぱは、ゴミを増やすし、葉っぱの裏にテントウムシが付いていたり、いろいろ面倒だけど、新鮮でおいしい材料を使った料理の並ぶ食卓は色鮮やかで楽しさも味になります。
不便ゆえにプロセスを楽しむことができたり、丁寧に手をかけることで、便利さのために失われていた旨味やしっかりと味の沁み込んだ料理を食べることができるのだと実感します。
飛行機と新幹線と在来線とバスと自転車と歩き、・・・等の移動手段の違いも、移動時間の速さだけでなく、駅弁の楽しみや、景色を楽しみながらの移動、暑さや寒さなど季節の変化を体感できるなど、いろいろな楽しみ方があります。
「不便益」の事例は、たくさんありそうです。