博多区千代にある「フィット県庁前」は、生活訓練事業と就労継続支援B型事業の2つの事業があり、「あなたの働く未来への一歩を応援します」と掲げています。
10代20代の若い方が「社会の中で働き暮らす」未来をめざして、仕事や生活に必要な具体的なスキルを磨き、様々な経験を積み、社会のルールを学び実践していく場として、生活訓練事業を実施しています。
めざしておられる働くカタチも、自立のカタチも、1人1人違います。
これまで過ごしてこられた家庭生活や学校生活も違いますし、強みも課題も、みんな違います。
2年間で、すべての生活スキルや社会生活スキルを身につけるなんてあり得ないですから、「やってみよう」「できる時もあるけど、できない時もある」「手伝ってもらったらできた」「困ったときは相談できる人がいるから安心」など経験を重ねて、ご自分の将来に意欲を持って次のステップに進んで行かれるように、そんな場と時間を提供したいと “フィット県庁前” の生活訓練を開所しました。
今、フィット県庁前のサービス管理責任者である岩隈に、今の生活訓練の様子をインタビューしてみました。
- 利用しておられる方の年齢は18歳~27歳で、平均年齢は20歳です。
- 知的障がい、精神障がい、発達障がいのある方が利用されています。
- 利用を始めた理由を聞くと「友だちを作りたい」「生活リズムを整えたい」「自信をつけたい」「いろんな経験をしたい」「働くためのマナーやルールを学びたい」「仕事に就くための選択肢を広げたい」・・・などです。
- 1週間のプログラムは『ボランティア活動』『社会について学ぶ』『生活プログラム』『体力プログラム』『ルールマナー講座』『仕事』に分けて実施しています。
- 『ボランティア活動』として、町内の歩道のゴミ拾いを毎週実施しています。
毎回大きなゴミ袋に2つ分ぐらい拾います。
また、福岡市の「一人一花運動」に参加していて、事業所前の車道と歩道の間の植え込みの1区画に、花を植えて管理しています。
いずれも、社会の一員としての自覚を促す目的で実施していますが、義務だけでなく楽しむことも意識して支援しています。 - 『社会について学ぶ』については、社会には様々なルールがあること、そして、その意味を自ら知ることを支援しています。
- 毎朝の身だしなみチェックは、毎朝お互いにチェックしあうことで、他者からの目を意識して自分の身だしなみを振り返ることができるようにと考えて支援しています。
- ある時、電信柱の「海抜・・m」の表示を見かけて「海抜ってなんだろう?」と声があがり「調べてみよう」とみんなで調べることになりました。
みんなで調べて、「へーそういうことなんだ!」「分かった!」という経験を繰り返すことで、わからないことや知らないことは調べてみればわかることや、知らないままよりも知ってる方が楽しいし、知っていることで安全に過ごせることに、気づいて欲しいと思って、いろいろ仕掛けています。 - 誕生日やクリスマスなどに、プレゼント創作や、料理を作る、お茶会をすることもあります。
イベントを楽しんだり、喜んでもらう経験も大切にしています。
たまたま「山笠って一度も見たことない」という利用者さんがいて「じゃあ一緒に見に行こう!」と飾り山笠を見に行きました。
今年は追い山がなくて残念でしたが、「初めて見た!」という人だけでなく、みんなで一緒に見に行くことそのものも楽しむこともできました。
- 『ボランティア活動』として、町内の歩道のゴミ拾いを毎週実施しています。
フィットについて、どんな風に思っておられるか利用者さんに聞いてみました。
- 「楽しい」
- 「アットホームな感じ=安心できる居場所」
- 「話しやすい」
- 「お母さんが知らないことも知ることができてうれしかった」
- 「ちょい楽しい」
- 「雰囲気が良い」
- 「困ったことを言いやすい」・・など
- 学校には行けなかったけど、フィットには通所できるようになった方が何人もおられますし、同じクラスだったけど在学中は全然話したことがなかった利用者さんが、フィットでは楽しそうにおしゃべりしている様子を見るとうれしいですね。
- 生活訓練を始めて5年が過ぎましたから、利用者さんはすっかり入れ替わりましたし、スタッフも替わりましたが、「1人1人ができることをする」「お互いに助け合う」「一緒に楽しもう」の雰囲気はずっと変わっていません。
- 1人では怖いけれど、仲間やスタッフと「一緒だったら、やってみようかな」と思えるし「何度もチャレンジしたら、できた!」という経験や、「誰かと一緒だったら、がんばれた!」という経験が、「がんばったらできる私、すごいジャン!」という、自信につながります。
キーワードは、仲間、経験、自信、自己肯定感、意欲です。
フィット県庁前の生活訓練で、意欲という宝物を育てて、将来に向かってほしいと思っています。
卒業した後は、就労移行支援を経て企業で働いている方、就労移行支援事業を利用して就職を目指している方、就労継続支援B型でじっくり企業就労の準備しておられる方など様々です。
学校の頃から引きこもっていた方で、初めはなかなか安定しなかったのですが、少しずつ元気になられて、働き始めた方もおられます。